「デュオ・リサイタル Vol.5の批評記事」

「音楽の友」10月号に、2009年8月7日 日本大学カザルスホールで開催された「小森輝彦・服部容子 デュオ・リサイタル Vol.5」の批評記事が掲載されました。

小森輝彦Br & 服部容子p

ドイツ・アルテンブルク・ゲラ市立劇場で、すでに9シーズンを歌い演じている小森は、毎夏一時帰国し、ピアノ服部容子とのジョイント・リサイタルを行っている。そこでは毎回、リート、オペラ・アリアなどを堪能させてくれるが、今回のジョイントでもマーラー《さすらう若人の歌》の秀逸な歌唱の他《こどもの不思議な角笛》から、イタリア・オペラ、バリトン・ロールのアリアを聴かせ、彼はもう円熟に手が届きつつある、と思わせた。《子供の角笛》からの4曲では《歩哨の夜の歌》の反戦的意志の表出、《高い知性への称賛》の皮肉、風刺がこちらを首肯させたが、舞台人としての押し出しの良さも見せつつ歌ったアリアたちが、やはり見事だった。すでにドイツの舞台で手がけた役なのであろう、《アンドレア・シェニエ》ジェラールの「祖国の的」、恋敵シェニエ告発の激情は内に渦巻いた。珍しいレオンカヴァッロ《ボエーム》ロドルフォのアリアもむろん聴かせたが、圧巻は《トスカ》「ヴァ、トスカ」。邪心吐露するスカルピアを、そこでたっぷりと演じ、役者だ!と思わせた。服部はドビュッシー《水に映る影》にポエジー。(8月7日・日本大学カザルスホール)    小山晃